厳選!路傍遺産を詩と写真と地図で紹介


木津川・宇治川・桂川が合流して淀川になる。
山河と田園(実は広漠とした河原にグランドやゴルフ場や何やら造成地に藪やら堤防やら)の 里山と呼びたくなる日本の原風景が、山紫水明とまでは言い難いまでも立ち止まれば 陽春に照り返る華麗なほどの千年の流れの饗宴に溜息させられる一時を御馳走してもらえる。ただし 光彩を撹乱し瀬音をかき消す交通量のせいで呑気に春うららかな野を闊歩する気分にはなり難いが、車道の傍らの低い仕切りしかない歩道の安全を頼みにして歩け歩けである。 一方、地上の喧騒に背を向けて、大気の蓋に一つ二つ浮き止められている銀雲を写し、まさに3本の川の字は三面鏡よろしく背丈を揃え肩を並べて寡黙に端座して海峡のドームの天井を仰いで打ち開かれている。

「木津川」
わき立つ層雲の如き山の緑、そのタンクよりしみ出たる無数の水の細胞は無限大に合流し太くなり自重をからげて山裾を右に左に駆け下りてきた。
その木津川は、平野が大阪と京都を結ぶ海峡のように狭くなってる地点で 男山をしなやかに回り込み潔く見栄を切って、その清冽な流れを淀川に差し出して舞台を下りる。


「宇治川」
宇治川は、襟元に小さいフィギュアのように見える釣人を並べたり、重い量感の水を所々に盛り上げたり、命ある流体を何匹もうねらせたり、
浅い瀬もあるのか三十石船の白帆のたなびきを幻想させる幾つかの弱いさざなみを縦に白く裾引きながら奥へ辞すかのようにそそと視界を離れて行く。
遠く目にとどく川床の繁った緑の塊の向こうには淀川が大らかにそのゴールを待ち受けている筈。
田畑に恵みをもたらすという使命を今は負ってはいないだろうが、 遠く一滴から始まり大水流となって大阪という大都市にとっての生命線としての水を運んでくれていると思えば、その途切れぬ水面の拍動にエールを贈らずにはいられない。


「桂川」
桂川は、思ったよりも広々と緑の翼を悠々と広げている。
ここから一気に天王山の麓の大山崎の州の長い堤の淵をえぐるように狭まりつつもとうとうと流れてゆく。
そして、 合流という目的地にグランディングして淀川と名を替えるのである。


御幸橋(木津川)の写真を見る
淀川御幸橋(宇治川)の写真を見る
天王山大橋(桂川)の写真を見る
(天王山大橋から京の方を眺める)の写真を見る

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