厳選!路傍遺産を詩と写真と地図で紹介
「新木津川大橋」
ループの巨塔を登る。 頂上へたどり着く決意だけで、出会う人さえない杣道を単独登攀。 黒煙を噴出すヘビ花火はくるくると火炎を巻いて三段、四段とせり上がる。 アーチ橋。両端の橋脚は「初めと終わり」のベクトルを支える「あっ」「うん」の獅子の力、高さを誇って躍動している。 その逞しい野獣の四足は美しい水色、ジャングルから覗いた隙間の視界に異彩を放つ仏塔の様に覆い被さってくる。 登りきった、眼まわる、そこからは自らを妄想人と化して。 橋は舞台。この舞台でなにを演じるのか。 上手から下手へ、ただ黙って歩んでも観客の目は我を追うのか。 灰色に濁った雲塊の下に何者にも媚びない自然の茫々たる原野のように人造パノラマの舞台装置は弓なりに悠々と横たわっている。 橋の向こうは過去か未来か。 過去に怒ってみせようか、未来に降伏する兵士の役をしてみようか。 大正から平成へ、いや、大正区から住之江区へのショート・カット、 こんな橋を渡って、人生は思わぬ処にたどり着いてしまう、何処へ? そろそろ人生の秋のよわいとなったが、 白痴の如く幼い元気さが残っている、そういうもの以外は自分に備わってこなかったかも・・・ 大勢の行進に呑まれて、ある時、浮雲の思いに浸り、水の藍染めの羅紗のさざめきに目を奪われてると 止まる!止まる!
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