厳選!路傍遺産を詩と写真と地図で紹介
「大和川 エエ処」
大阪から遡上するように走って来た大和路快速線にツルを絡ませる如く蛇行する大和川の流れは起伏と建物群に水と緑を見え隠れさせながらも着かず離れず道連れて往く。 電車は奈良盆地への緩やかな長い傾斜を降りて王寺駅の胸懐へと潜り込んだ。 王寺駅前の西友SEIYUにケツ向けて北向きに細い路地へ踏み入る。両脇路に小奇麗な住宅に混じって蔵屋敷や土蔵の残り香のする白壁や屋根瓦もちらほら。 その小路が果てると景色は一変して、広大な谷間の底の別天地か、大和の国の古よりの歳月の重畳にうねりながら流れゆく大和川、その乳腹腰のような彎曲のかなめの広間の玄関に立ち尽くしてしまう。 街をぐるりと廻り込む流れの内側に自然力で形成された河川敷を発見!訪ねて正解、秋はイワシ雲も立てるほど空高き斑鳩の地であるが、今日は逆に少し残念にも雲一つ無い水色の宇宙の温室の球面の真下にある。 屈託の無いのどかな時空の風船の中に潜り込もうか。 若草橋を渡れば、黄金の稲穂の国、遠く山陰は紫にかすみ、鎮守の森に寄り添う村、森にはクヌギやケヤキ、カシや椎ノ木、ナンキンハゼなんかも。ゆく夏の陽光に、まだ瑞々しい漆葉を名残惜しそうに揺らせている。 近くは農道に畑、柿の大樹もたわわに実って迎え待つ、明日の事ども思い煩うことなかれ、宿命に抗うことなかれ、川の流れのようであれ。まさに天国への橋という賛辞を捧げてみたくなった。 河口から30Kmほどの地点。 川原の脇は畦や畑、湿地や森までも有る。一見、山麓の農家の佇まいの家並みまで・・・。 川原の堤は草刈跡も鮮やかに満々と柔い陽射しを貯めているがまだまだ土手や岸は野草に覆われてススキやオギ(いね科)、目立たぬ様のブタクサやタデ、その他、名も知らぬ草葉の瑞々しい絨毯敷きの荘重な様相を呈している。 野ゆき山ゆき川辺ゆき、憂いは青し空よりもって、春夫は何を? あっ、蜂か虻かが手に当たった・・・一休みする余裕もない素人のカタリベがボーと歩いていたからか・・・気〜つけなはれや〜
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